ニュースの要点
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター老化疫学研究部の大塚礼部長を代表とする研究グループは、大正製薬株式会社および北翔大学との共同研究で、食事からのタウリン摂取量が多いと、8年後の脚の筋力(膝伸展筋力)が維持される傾向にあることを「NILS-LSA(国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究)」の縦断解析により見いだした。
研究内容(抜粋)
NILS-LSA第3次調査2002~2004年、ベースライン)と約8年後に行われた第7次調査(2010~2012年)の参加者のうち、両調査において食事秤量記録調査と体力測定を実施した40歳以上の男女1,454名を対象に、ベースラインのタウリン摂取量と体力指標(膝伸展筋力、長座位前屈、閉眼片足立ち、最大歩行速度)の8年間の変化量との関連を縦断的に解析した。
※タウリン摂取量は、2010年版日本食品標準成分表(1,878品目)のうち751品目(海藻類、魚介類、肉類、卵類、牛乳・乳製品の5つの食品群を含む)から作成したタウリン含量表を用いて算出した。
研究結果(抜粋)
その結果、食事からのタウリン摂取量が多いほど膝伸展筋力が増加していることが見いだされた。65歳以上では、タウリン摂取量の多寡にかかわらず、膝伸展筋力は低下する傾向を認めたが、タウリン高摂取群においては膝伸展筋力の減少幅が小さく、タウリンの摂取量が多いと筋力が維持される傾向が示された。
これらの結果より、タウリンの摂取は中高年者の膝伸展筋力、すなわち脚の筋力の維持につながる可能性が示唆された。本解析集団では、食事由来のタウリンの約80%は魚介類からの摂取でしたが、近年、我が国では魚介類摂取量が低下しており、タウリン摂取量も低下傾向にある。
高齢化が進む我が国において、生涯を通して脚の筋力を維持することは、社会活動や運動習慣を保持し、健康で豊かな生活をおくるために重要な要素です。本研究により、魚介類の摂取等によりタウリンを摂取することが筋力維持に良い影響を与える可能性が示唆されたことから、魚介類を取り入れた栄養バランスの良い食生活を継続することが健康寿命の延伸に重要と考えられる。