ニュースの要点
日本医療機能評価機構は5月8日、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例2025年No.4」を公表した。
- 戻し間違いによる薬剤取り違え:カムシア配合錠LD「あすか」[調剤]
- 本事業には、外観が類似した薬剤、名称が類似した薬剤、規格が異なる薬剤、薬剤棚に隣接して配置された薬剤などの戻し間違いにより、調剤時に薬剤を取り違えた事例が報告されている。
- 薬剤の戻し間違いを防止するために、以下の対策を組み合わせて実施することが重要である。
- 外観や名称が類似している薬剤、複数の規格がある薬剤を採用している場合は、薬剤棚の配置を離すことや、注意を促す表示を行うことなどの工夫を行う。
- 薬剤棚に戻す薬剤は、専用の箱に一時保管し、業務が一段落した際に複数人で確認しながら薬剤棚に戻す。
- GS1コードを利用した調剤監査支援システムを採用している場合は、PTPシートのGS1コードを読み取り、薬剤名と棚番号を確認してから薬剤棚に戻す。
- 薬剤の戻し間違いを防止するには、対策を手順書に記載して薬局内に周知し、すべてのスタッフが手順を遵守することが重要である。
- PTPシートの薬剤を取り揃える際に他の薬剤が混入する可能性を想定し、鑑査を行う際は薬剤を束ねた輪ゴムを外し、端数を含め全てのPTPシートの表裏を1枚ずつ見て、薬剤名を確認する必要がある
- 投与量:イグザレルトOD錠15mg[疑義照会・処方医への情報提供]
- イグザレルト錠/OD錠15mgを成人の静脈血栓塞栓症の治療に用いる場合、発症後の初期3週間の投与とその後の再発抑制を目的とした投与では、1日の用量が異なる。特に1日2回の投与を行う初期3週間は、出血のリスクに十分注意する必要がある。
- イグザレルト錠/OD錠15mg1回1錠1日2回の投与は入院中に開始されることが多いため、退院後にイグザレルト錠/OD錠15mg1回1錠1日2回が処方された場合、薬剤師は治療開始からの投与期間を確認し、1日量が適切であるか検討する必要がある。
- 本事例は、患者が退院し、治療を行う医療機関が変更になった際に、薬剤が適切に処方されなかった事例である。退院後も適切な薬物療法を継続するには、入院していた医療機関と退院後に治療を引き継ぐ医療機関との連携が重要になる。
- 退院後の患者の処方箋を応需する薬局薬剤師は、入院中の薬剤の服用・使用状況や今後の治療方針に関する情報を収集し、退院後の薬物療法が適切に継続されているか確認することが重要である
- 患者の生活状況(職業):リフヌア錠45mg[疑義照会・処方医への情報提供]
- 2022年11月2日に日本咳嗽学会より「ゲーファピキサントクエン酸塩錠(リフヌア錠45mgⓇ)の適正使用のお願い」が公表され、次のように記載されている。「難治性の慢性咳嗽にリフヌア錠Ⓡを使用される場合は、診断および特異的治療を十分に行った上で導入いただくこと、また味覚障害などの副作用発現の可能性を説明していただく様お願いいたします。」
- 本事例は、リフヌア錠45mgが処方された患者が調理師であることを把握していた薬剤師が、患者の職業に大きな影響を及ぼす可能性がある味覚関連の副作用について添付文書に基づいた情報を提供した結果、患者が薬剤の変更を希望した事例である。
- 薬物療法は、患者が服用する薬剤や服用目的、服用方法などを十分に理解し、納得したうえで実施、継続することが重要である。
- 患者の職業や生活状況に大きな影響を及ぼす可能性がある副作用を有する薬剤が処方された際、添付文書やRMP資材などを活用して必要な情報をわかりやすく伝え、患者が納得して薬剤を服用できるよう支援することは、薬剤師に求められる重要な使命である。



(https://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/pdf/sharing_case_2025_04.pdf)