ニュースの要点
国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの老年社会科学研究部野口泰司主任研究員、斎藤民部長らのグループは、愛知東邦大学、東海学園大学との共同研究において、人々の認知症に対する差別や偏見(認知症スティグマ)を評価する質問票(26項目)とその短縮版(12項目)を開発した。
この質問票により、地域住民などの認知症に対するスティグマの程度を把握することができ、認知症施策の効果評価や、認知症にやさしいまちづくりの地域診断を通じて、認知症の人も含めた地域共生社会の実現に貢献することが期待される。
〇研究の背景
認知症スティグマは、認知症に対するネガティブな信念や行動であり、偏見や差別という形で現れる。認知症スティグマは、認知症の人の受診や治療の遅れ、社会交流の減少などにつながり、認知症の人と家族の生活の質を低下させるため、認知症スティグマの克服は世界共通課題となっている。しかし、日本では必ずしも認知症スティグマ低減のための対策は十分ではなく、その原因の1つとして日本において使用可能な認知症スティグマの質問票などの評価・把握ツールが確立していない課題があった。
認知症スティグマは、認知症の本人に生じるセルフスティグマ、認知症ではない(または当事者家族でない)一般住民において生じる公的スティグマ、認知症の本人の家族や友人などの近しい人に向けられる連合的スティグマなどに分けられる。その中でも特に、一般住民の公的スティグマは、セルフスティグマや連合的スティグマを増大する要因となり、認知症の人と家族をとりまく地域の社会環境要因であることから、公的スティグマの低減、そしてそのための評価ツールを構築することが重要である。