ニュースの要点
日本医療機能評価機構は12月27日、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例2024年No.12」を公表した。
- 一包化調剤の間違い:4種類の薬剤30日分を一包化【調剤】
- 一包化調剤の間違いは、本事例のように複数の患者に影響を与える可能性がある。正しい薬剤が過不足なく分包されているかを確認することは、間違いの連鎖を防ぐうえで重要である。
- 一包化調剤を行う際は、分包されるはずの薬剤が分包機内に残る可能性を常に考慮し、分包作業の前後に分包機の内部に薬剤が残っていないか確認することが重要である。特に分包機に残りやすい薬剤がある場合は、一覧表にまとめて薬局のスタッフに周知し、調製や鑑査の際により一層注意する必要がある。
- 機器の不具合による誤調剤が起きた際は、発生した状況を機器メーカーに報告し、必要な対応や予防対策を行うことが重要である。機器メーカーによるメンテナンスを受けることも検討する。
- 一包化調剤を行う際は、分包した薬剤の刻印や錠数を一包ずつ確認することが基本である。PTPシートなどの計数調剤に比べ確認作業が煩雑で時間がかかるため、薬剤の調製から交付までに時間がかかることを患者に伝え、調製者や鑑査者が分包した薬剤を確認する時間を十分確保することが望ましい。
- 分包機の構造や特徴、操作方法、分包した薬剤の確認手順、薬局の湿度管理などの環境整備、機器のメンテナンスなどについて手順書を作成し、随時見直しを加えながら周知・遵守することが重要である。
- 副作用の発現:バラシクロビル・オルミエント錠4mg【疑義照会・処方医への情報提供】
- 帯状疱疹と診断されバラシクロビルが処方された患者のお薬手帳を確認した際、他の医療機関からオルミエント錠4mgが処方されていることを発見した薬剤師が、オルミエント錠によるヘルペスウイルスの 再活性化の可能性を疑い、オルミエント錠4mgを処方している医師に情報提供を行った事例である。
- オルミエント錠は、免疫反応に関与するヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害するため、感染症に対する宿主免疫能に影響を及ぼす可能性がある。オルミエント錠の医薬品リスク管理計画書(RMP)の患者向け資材※には、「服用中に注意が必要な症状」として、咳、発熱、のどの痛み、寒気、痛みを伴う発疹(帯状疱疹)などが挙げられている。
※オルミエント錠の医薬品リスク管理計画書(RMP)の患者向け資材「オルミエントを服用されている方へ」(参照2024年11月20日) - オルミエント錠のように服用により重篤な副作用が発現する可能性がある薬剤を交付する際は、製薬企業が作成している患者向け資材などを活用し、患者に副作用の症状などを具体的に説明したうえで、症状が現れた時は速やかに医師や薬剤師に相談するよう伝えておくことが重要である。さらに、交付後の患者フォローアップは、副作用の早期発見と早期対応を可能にし、重篤化の回避につながるため、積極的に取り組む必要がある.
- 不適切な使用の回避: ナシビンMスプレー【一般用医薬品等】
- 第2類医薬品を販売する際、薬剤師または登録販売者により情報提供を行うことは努力義務とされているが、購入者は薬剤師や登録販売者に相談せずに第2類医薬品を購入することがある。
- 第2類医薬品であるナシビンMスプレーの添付文書には、「モノアミン酸化酵素阻害剤等を服用している人」は使用してはいけないことが記載されており、モノアミン酸化酵素阻害作用等を有する薬剤の成分名が示されているが、購入者は、服用している医療用医薬品名と照らし合わせて判断することが難しい場合がある。
薬剤師や登録販売者は、ナシビンMスプレーの購入者に積極的に関わり、必要な情報を伝え、使用が適切であるかを確認することが重要である。 - パーキンソン病治療薬で選択的モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬であるセレギリン塩酸塩(エフピーOD錠2.5など)は、併用禁忌の薬剤が多く、一般用医薬品にも該当する薬剤がある。薬剤師は、セレギリン塩酸塩を服用している患者、家族および介護者に、一般用医薬品を含む他の薬剤を服用・使用する際は薬剤師に相談するようあらかじめ説明しておき、定期的に併用薬を確認することが重要である。