ニュースの要点
財政制度等審議会が11月29日に開催され、「令和5年度予算の編成等に関する建議」をまとめて鈴木俊一財務大臣に提出し、本建議の趣旨に沿い、今後の財政運営に当たるよう要請した。
各論では、医療について「ウィズコロナへの移行に向け、各種の特例措置について、検証と見直しを行っていくべき。医療保険制度の見直し(負担能力に応じた負担)、毎年薬価改定の完全実施、「かかりつけ医機能」が発揮される制度整備等の医療提供体制の見直しを実現すべき」とした。
医療関連では、医療費の在り方・医療提供体制について以下のように言及している。(抜粋)
医療費の在り方
- 医療費の動向と医療機関の経営実態 資料Ⅱ-1-41・資料Ⅱ-1-42
新型コロナ感染症の感染拡大により、2020年度の医療費は▲3.1%であったが、2021年度は+4.6%となり、コロナ前の医療費水準を回復している。令和4年度について、医療機関の経営は近年になく好調となることが窺える。既にコロナ前の報酬水準を回復している医療機関に対し、令和4年度に補助金と診療報酬の特例で年間4兆円程度を支援することとなる見込み。
医療機関の経営は堅調である。特例的な補助金や診療報酬は、国民負担によって賄われることを踏まえれば、特例は早急に縮小、廃止すべき。 - リフィル処方箋 資料Ⅱ-1-45
リフィル処方箋の導入・活用促進による医療費効率化効果を改定率換算で▲0.1%(医療費470億円程度)と見込んでいるが、その早急な検証が必要。 - 毎年薬価改定 資料Ⅱ-1-49
令和5年度薬価改定については、物価高における国民の負担軽減の観点から、完全実施を実現すべき - 既存医薬品の保険給付範囲 資料Ⅱ-1-51
既存医薬品の保険給付範囲を見直す際の手法としては、①OTC類似医薬品等の保険給付範囲からの除外、②医薬品を保険収載したまま、患者負担を含めた薬剤費等に応じた保険給付範囲の縮小が考えられる。 - イノベーションの促進 資料Ⅱ-1-52
真にイノベーションの推進に資すると認められる画期的な新薬については、薬価収載時に最大120%の加算が得られ、後発品が上市されるまでの間(又は15年間)は加算後の薬価が維持される枠組み。
医療提供体制
- 効果的・効率的な医療提供体制 資料Ⅱ-1-53
- 患者の高齢者が進んで疾病を持つ者が増える一方で、人口減少により医療資源の人材が先細る中で、効果的・効率的な医療提供を行う体制を実現することは、医療制度改革の最重要課題。
- これまで、地域医療構想、地域包括ケアが法律に位置付けられており、今後、後期高齢者が急速に増加する中で、当初の構想を早急に実現すべき。
- さらに、これらを各地域で機能させるには、診療所等の外来の機能分担も不可避であり、「かかりつけ医機能」を有する医療機関の機能を明確化、法制化し、機能発揮を促す必要がある。
- 地域医療構想 資料Ⅱ-1-55
各地域における2025年の医療需要と病床の必要量について、医療機能(高度急性期・ 急性期・回復期・慢性期)ごとに推計し、各構想区域に設置された「地域医療構想調整会議」において、病床の機能分化・連携に向けた協議を実施する枠組み。 - かかりつけ医機能 資料Ⅱ-1-57
- 超高齢化を見据えて国民に強いニーズ
- 新型コロナ感染拡大が契機
- 地域における役割分担を機能させるために不可欠
- 医療資源の有効活用
- 患者データの集約・活用 資料Ⅱ-1-62
患者のデータを集約して担当医がそれに基づいて幅広い相談・診療を行うことは、医療の質の向上にとって不可欠。様々な普及策を通じて、マイナンバーカードの健康保険証活用を広げていく必要がある。 - 医療法人等の経営状況の「見える化」資料Ⅱ-1-64
- 事業報告書等について、令和5年度から都道府県HP等での閲覧が可能となる予定であり、早急かつ確実な実施を行うべき。
- 施設別の詳細な経営情報の提出を求め、経営情報のデータベースを構築する新たな制度が検討されている。その際、公的価格評価検討委員会における議論を踏まえ、現場で働く医療従事者の処遇の把握を行い、費用の使途の見える化を通じた透明性の向上を図る観点から、職種ごとの一人当たりの給与額が確実に把握できるような制度設計を行うべき。