ニュースの要点
厚生労働省は12月8日、社会保障審議会医療保険部会に「長期収載品の保険給付のあり方に関する見直し案」を示し了承された。
イノベーション推進と安定供給確保に向けた長期収載品の保険給付の在り方の見直し案
- 我が国の創薬力強化に向けて、イノベーションを推進するとともに、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消を実現していくために、薬価上の措置を講じつつ、研究開発型ビジネスモデルへの転換を促進することが必要である。
- また、後発医薬品に関しては、安定供給を前提としつつ、更なる利用を推進していくことが必要となる。特に、後発医薬品への置換率が概ね80%程度(数量ベース)となるなど、相当程度、定着してきており、患者にとっての選択可能性は広がっている。一方、金額ベースでは5割程度にとどまっており、従来とは異なるアプローチで更なる後発医薬品への置換を進めていく必要がある。
- 特に、創薬力強化に向けて、革新的な医薬品等の開発強化、研究開発型のビジネスモデルへの転換促進等を行うため、イノベーションの適切な評価などの更なる薬価上の措置等を推進する。 医療保険財政の中で、こうしたイノベーションを推進するため、後発医薬品の安定供給を図りつつ、長期収載品の保険給付の在り方の見直しを行う。
- こうした政策的な要素を考慮した上で、見直しにあたっては、長期収載品について、
- 医療上の必要性があると認められる場合等は、保険給付するという前提に立ちつつ、
- 後発医薬品が存在する中においても、薬剤工夫による付加価値等への患者の選好により使用されることがある等の長期収載品の使用実態も踏まえ、具体的な手法としては、選定療養を活用することとする。
保険給付と選定療養の適用場面:
- 医療上の必要性があると認められる場合(例:医療上の必要性により医師が銘柄名処方(後発品への変更不可)をした場合)については、選定療養とはせず、引き続き、保険給付 の対象としてはどうか。
- 他方、①銘柄名処方の場合であって、患者希望により長期収載品を処方・調剤した場合や、②一般名処方の場合は、長期収載品の使用について、選定療養としてはどうか。
- 医療上の必要性があると認められる場合については、処方等の段階で明確になるような仕組みの整理が必要ではないか。
- 特に、薬局に後発医薬品の在庫が無い場合など、後発医薬品を提供することが困難な場合については、患者が後発医薬品を選択できないことから保険給付の対象としてはどうか。※選定療養の対象品目の範囲:
- 後発医薬品上市後、徐々に後発品に置換えが進むという実態を踏まえ、
- 長期収載品の薬価ルールにおいては後発品上市後5年から段階的に薬価を引き下げることとしている。この点を参考に、後発品上市後5年を経過した長期収載品については対象としてはどうか。
- また、後発品上市後5年を経過していなくても、置換率が50%に達している場合には、後発品の選択が一般的に可能な状態となっていると考えられ、選定療養の対象としてはどうか。
保険給付と選定療養の負担に係る範囲:
- 長期収載品の薬価と選定療養の場合における保険給付範囲の水準の差について、
①長期収載品を選好する場合における患者の負担の水準、
②メーカーによる薬剤工夫など、付加価値等への評価、
③医療保険財政の中で、イノベーションを推進する観点や、従来とは異なるアプローチで更なる後発医薬品への置換を進める観点、
④選定療養化に伴い、一定程度、後発医薬品へ置換えが進むことが想定される中で、現下の後発医薬品の供給状況といった観点を踏まえ、長期収載品と後発品の価格差の少なくとも2分の1以下とする方向で検討してはどうか。例えば、当該価格差の2分の1、3分の1、4分の1といった定め方を検討することも考えられるのではないか。 - 選定療養に係る負担は、医療上の必要性等の場合は長期収載品の薬価で保険給付されることや、市場実勢価格等を踏まえて長期収載品の薬価が定められていることを踏まえると、上記の一定割合の相当分としてはどうか。特に、選定療養に係る負担を徴収しないことや上記の差より低い額で徴収することは、後発医薬品の使用促進を進めていくという施策の趣旨を踏まえる必要があるのではないか。
その他:
- なお、「薬剤定額一部負担」、「薬剤の種類に応じた自己負担の設定」、「市販品類似の医薬品の保険給付の在り方の見直し」については、以下の意見があったことを踏まえ、引き続き検討すべきである。
- 持続可能性という観点から考えれば、例えば、市販品類似の医薬品の保険給付の在り方の見直し等については、引き続き検討をしていく必要があるのではないか
- 国民皆保険の持続可能性の確保とイノベーションの推進の両立を図る観点から、その他の薬剤自己負担の項目に関しても、引き続き議論のテーブルに乗せる必要があるのではないか
- やみくもに負担増を求めるのではなく、医療上必要なものは保険適用するという公的医療保険制度の原則が守られているのか、安心して必要な医療を受けることができる環境が守られているのか等観点から、国民にとって必要な医療が確保されているのか、相当に精緻な議論が必要ではないか
- 医療上必要なものは保険適用にするという公的医療保険制度の原則が守られなければならない中、薬剤定額一部負担と薬剤の種類に応じた自己負担の設定は現実的に考えられず、また、市販品類似の医薬品の保険給付の在り方の見直しは、かえって高額な医療へシフトする懸念があり、また、市販品があることをもって類似薬品を使用しにくくすることは患者の不利益にもつながるのではないか
選定療養とは(厚生労働省)
健康保険法の一部を改正する法律(平成18年法律第83号)において、平成18年10月1日より、従前の特定療養費制度が見直しされ、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な「評価療養」と、特別の病室の提供など被保険者の選定に係る「選定療養」とに再編成されました。
この「評価療養」及び「選定療養」を受けたときには、療養全体にかかる費用のうち基礎的部分については保険給付をし、特別料金部分については全額自己負担とすることによって患者の選択の幅を広げようとするものです。
- 選定療養の種類
- 特別の療養環境(差額ベッド)
- 歯科の金合金等
- 金属床総義歯
- 予約診療
- 時間外診療
- 大病院の初診
- 小児齲蝕 (うしょく) の指導管理
- 大病院の再診
- 180日以上の入院
- 制限回数を超える医療行為