平野道夫
【プロフィール】
埼玉県富士見・三芳薬剤師会 学術部理事
城西大学薬学部セルフメディケーション学 非常勤講師
日経DIコラムニスト
認定実務実習指導薬剤師
近隣の薬学部学術サークル・有志の指導ボランティア担当
武道がライフワークで、中学からの空手修行で多くの大会出場
2005年 世界空手道連盟 関東大会無差別級優勝
2013年 世界空手道連盟 全日本選手権重量級3位
【著書】
「解消ポリファーマシー」(共著)
今も昔も薬局薬剤師は大忙しです。
私が薬剤師になった頃は学校も会社も週休1日でした。土曜日が半ドンで、日曜日が休みでした。(今の薬剤師さんの多くは、半ドンという言葉にも馴染みはないでしょうが)
思い返せば「まともな昼休み」の記憶はほとんどありません。食事中の呼び出しなどは当たり前でした。令和の現在でもそんな薬剤師さんはあちこちにいらっしゃると聞いていますが、コンプライアンス違反となってしまうのでアウトですね。
私が小さな薬局に勤めていた頃は、部下たちを先に昼休みに入ってもらっていました。その結果、私が最後に昼休みに入るわけですが16:30とか17:00からの昼休みが日常でした。夕方の来局患者さんの受付のピークと重なれば、昼休みは20:00とかも珍しくありませんでした。流石に22:00に昼休みに入ったときは「これ夕飯か夜食でしょ!」と笑っていました。
前置きが長くなってしまいました。繰り返しになりますが今も昔も薬局薬剤師は大忙しなわけです。そんな状況ですから薬局薬剤師からはまるで挨拶のように「忙しい!」、「人が足りない!」という言葉が飛び交っています。薬剤師会の仕事もしているので多くの薬剤師さんと会う機会がありますが、その中の一部の薬剤師と私との会話も例外ではないようです。
処方鑑査に臨床検査データは活用している?
忙しくてそれどころではありません。
「良いSOAP薬歴は、個別最適化した良い服薬指導の結果だね」
忙しくてそれどころではありません。
「これはトレーシングレポートにすべきだね」
忙しくてそれどころではありません。
「夜にwebで勉強会があるよ」
忙しくてそれどころではありません。
・・・こんな発言は自らの仕事の質を否定する事になりませんか。日々の薬局業務を「薬のプロフェッショナルな仕事」とはほど遠い単なる「患者を捌く作業」と認めているようなものですから。
自分が重い病気にかかり、信頼できると思う医師を見つけ、身体と命を預けることを想像してみてください。その医師が実は大変忙しく、勉強やその他必須の責務に対して「忙しくてそれどころではありません」と発言していたらどう思いますか。
医師には「プロフェッショナルな仕事」を求めるのに、薬剤師には不要なのでしょうか。そんなわけありません。
たとえどんなに忙しくても、「忙しくてそれどころではありません」という発言はなんの言い訳にもなりませんね。
また、そんな発言を聞いても叱らずに導いていける薬剤師になりたいですね。