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《第11回》本物の漢方薬を作ってみませんか?【埼玉県富士見・三芳薬剤師会 学術部理事 平野道夫】

著者

平野道夫

【プロフィール】
埼玉県富士見・三芳薬剤師会 学術部理事

城西大学薬学部セルフメディケーション学 非常勤講師
日経DIコラムニスト
認定実務実習指導薬剤師

近隣の薬学部学術サークル・有志の指導ボランティア担当

武道がライフワークで、中学からの空手修行で多くの大会出場
 2005年 世界空手道連盟 関東大会無差別級優勝
 2013年 世界空手道連盟 全日本選手権重量級3位

【著書】
「解消ポリファーマシー」(共著)

私は珈琲が大好きです。好きが高じて、毎朝、珈琲豆を挽いて淹れています。珈琲豆も何年もかけてお気に入りをみつけ、取り寄せています。好きな方しかわからないのかもしれませんが、缶コーヒーやインスタントコーヒーとはまったくの別物で味わいが違います。

漢方薬も同じです。
製薬メーカーが製造した医療用漢方製剤やOTCの漢方製剤はインスタントコーヒーと同じ様に凍結乾燥したものですから、必要なときは自分で本物の漢方薬を作っています。
(製薬メーカーも自社製品を漢方薬ではなく漢方製剤と表記しています)

湯をつくる

漢方薬を作る際は表にあるように、構成生薬を意識しながら作ると楽しいです。

発汗は苦い味の麻黄で血管から水分を引き出し、辛い味の桂枝で皮膚の汗腺を開く必要があります。

発汗=苦温剤(麻黄)+辛温剤(桂枝)

桂枝湯:桂枝が含まれますが、麻黄がないので発汗させません。(虚証方剤)

葛根湯:麻黄も桂枝も含まれますので発汗剤となります。(実証方剤)

麻黄湯:贅肉を削ぎ落としたように生薬が絞られていて、麻黄と桂枝の働きが際立ち、強力な発汗剤となります。(実証方剤)

小建中湯:桂枝湯の芍薬を増量し、膠飴を加味したものですから、麻黄がなく発汗剤ではありません。(虚証方剤)

また、原典にしたがえば、葛根湯は構成する7つの生薬をいっぺんに煎じるのではなく、葛根と麻黄を先に煎じ、灰汁を取り除いてから残りの生薬を入れます。
学生時代、仲間で鍋パーティーを開いたとき「鍋奉行」に「火が通りにくいものから鍋に入れなくちゃ」と注意されたことを思い出したりします。

散をつくる

二日酔い薬としても有名なものに五苓散があります。これは夏バテの特効薬としても好評です。凍結乾燥のインスタント製剤だと揮発性や脂溶性の成分や不溶性食物繊維が失われてしまい、本来の散剤としての効果が落ちてしまいますので、自分で作るに限ります。

作り方は簡単で各生薬末を混合するだけです。ただ、猪苓は繊維質の塊なので製品として猪苓末が入手できないことが多いです。専用の粉砕用グラインダーがないと苦労します。また、揮発性成分を有効に使える散剤ですから桂枝などは是非、最高級品を用意しましょう。

注:前後にコロコロさせるやり方では粉砕できませんので、
あくまで腰をいれるというイメージです。
調製時には床面の衛生面にも配慮しています。

私たち薬剤師は「薬局製剤」として本物の漢方薬を作ることができます。
勿論、医師が処方箋に記せば本物の漢方薬を調剤することもできます。

せっかくの知識と技術を患者さんや地域の方々にアウトプットしたいですね。

参考
薬局製造販売医薬品の取扱いについて 厚生労働省(平成17年3月25日)
東京都保健医療局

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