LINE登録で「薬剤師が知っておくべき情報まとめ」を配信中詳しくはこちら

《第12回》本物の漢方薬を作ってみませんか?Part2【埼玉県富士見・三芳薬剤師会 副会長兼学術部理事 平野道夫】

著者

平野道夫

【プロフィール】
埼玉県富士見・三芳薬剤師会 副会長 兼 学術部理事

城西大学薬学部セルフメディケーション学 非常勤講師
日経DIコラムニスト
認定実務実習指導薬剤師

近隣の薬学部学術サークル・有志の指導ボランティア担当

武道がライフワークで、中学からの空手修行で多くの大会出場
 2005年 世界空手道連盟 関東大会無差別級優勝
 2013年 世界空手道連盟 全日本選手権重量級3位

【著書】
「解消ポリファーマシー」(共著)

現代においては、◯◯湯・◯◯散・◯◯丸もエキス製剤(フリーズドライ製法)が普及しているので本物の漢方薬を見たこともに触れたこともない薬剤師さんも多いのかもしれません。

本物の漢方薬と題して前回は「湯」と「散」をご紹介しました。Part2の今回は「丸」を取り上げさせていただきます。

丸をつくる

漢方薬名の最後に丸がつく有名なものには八味地黄丸、六味地黄丸、牛車腎気丸、桂枝茯苓丸等があります。民間薬(OTC)にもいくつかありますね。
作り方は散と同様に各生薬末を混合し、それを丸めただけです。
湯と比べると吸収が穏やかとなりますし、構成生薬による胃粘膜への刺激も蜂蜜で練り上げて丸剤にしてあるため穏やかなものとなります。

八味地黄丸においては、名前にも記されているように地黄が大きな意味をもち、構成生薬の中で最も多い量となります。しかし、地黄は胃粘膜への刺激がとても強いことが知られています。その副作用予防のためにも丸剤となっているわけです。したがって蜂蜜で練り上げていないエキス製剤では胃もたれ等の副作用が頻出することになり、食後処方(Off-label use)もよく目にすることになります。

八味地黄丸地黄・山茱茰、山薬・澤瀉・茯苓・牡丹皮・桂皮・炮附子
六味地黄丸地黄・山茱茰、山薬・澤瀉・茯苓・牡丹皮
牛車腎気丸地黄・山茱茰、山薬・澤瀉・茯苓・牡丹皮・桂皮・炮附子・牛膝・車前子

八味地黄丸は省略して八味丸とも呼ばれ、また、腎気を補う処方ですので腎気丸という別名もあります。
小児(腎気が豊富)に用いる場合は腎虚に力を発揮する桂皮と炮附子は必要がありません。したがってそれらを除いた六味地黄丸となります。

さらに、八味地黄丸の証ではあるものの利水する必要がある場合は利尿効果のある牛膝と車前子を加味することになります。すなわち「牛膝+車前子+腎気丸」ですので牛車腎気丸となるわけです。

女性のための三大基本処方として当帰芍薬散、加味逍遙散。桂枝茯苓丸があります。
とても大雑把に言えば順に虚証、中間証、実証となります。エキス製剤においてもわかりやすいように23番、24番、25番となっていることはみなさんご存知だと思います。

実は、医療用漢方製剤に振り分けられた番号の意味を考えると非常に興味深いものがあります。前述の八味地黄丸、六味地黄丸、牛車腎気丸も関連した処方ですので下一桁が「7」に統一され、順に7番、87番、107番となっています。他にもたくさんの意味が込められていますのでお時間のあるときに番号を眺めてみることをおすすめします。

桂枝茯苓丸は桂皮・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬の5つの生薬末を混合したものに水分を飛ばした蜂蜜で練り上げたものです。瘀血を取り除き、気血を巡らし、水分の停滞を調節し、鬱血を散じ、緊張と弛緩を調整する処方です。

効能・効果においては添付文書を参照していただければよいのですが、筆者は瘀血によるしこりに着目して子宮筋腫に卓効した経験を数多く持っています。子宮筋腫のオペ前に薏苡仁を加味して服用していただいたところ、執刀医が驚くほど縮小したことがいくつもありました。
もちろんすべての子宮筋腫に桂枝茯苓丸が効くと言っているのではなく、桂枝茯苓丸の証の患者の訴えが便秘、にきび、不妊、頭痛、腹痛、子宮筋腫等であった場合にそれらが解消して、患者さんから大変喜ばれた経験がいくつもあるということです。
薬剤師冥利に尽きる瞬間ですが、これも薬局製剤を実施しているおかげです。

このような専用の丸剤製造機は持っていませんので手でひとつずつ作ります。
生薬末は購入、または薬局で粉砕して作ります。
乳鉢で混合したあとに水分を飛ばした蜂蜜で練り上げます。
通常は湯煎して蜂蜜の水分を飛ばしますが、私は電子レンジを使っています。
学生たちも楽しそうに作ってくれます。
重量を量りながら丸めていきます。
うさぎの糞のようなので兎糞(とふん)と呼ばれています。

まるで高級な八つ橋のようなシナモンの良い香りがします。古典通り作ったので1回量は2粒です。とても美味しくて人気の漢方薬です。
ただし、販売する際には薬局製剤指針に従う必要があるので丸剤1個につき蜂蜜を除いた合計生薬0.1gにする必要があります。(成人1日3回 1回20~30粒)

機会がありましたら薬局で製造し、エキス製剤との味や香りの違いを実感してみてください。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
目次