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《第7回》薬局の三大業務【埼玉県富士見・三芳薬剤師会 学術部理事 平野道夫】

著者

平野道夫

【プロフィール】
埼玉県富士見・三芳薬剤師会 学術部理事

城西大学薬学部セルフメディケーション学 非常勤講師
日経DIコラムニスト
認定実務実習指導薬剤師

近隣の薬学部学術サークル・有志の指導ボランティア担当

武道がライフワークで、中学からの空手修行で多くの大会出場
 2005年 世界空手道連盟 関東大会無差別級優勝
 2013年 世界空手道連盟 全日本選手権重量級3位

【著書】
「解消ポリファーマシー」(共著)

最近、薬局の三大業務を知らない薬剤師が多いように感じます。中にはご存知であっても知らないふりをしている薬剤師さんもいるのかもしれませんね。

薬局の三大業務に関する薬剤師法と薬剤師綱領を以下に示します。

薬剤師法第一条(薬剤師の任務)
薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする。

薬剤師綱領
薬剤師は国から付託された資格に基づき、医薬品の製造、調剤、供給において、その固有の任務を遂行することにより、医療水準の向上に資することを本領とする。 

薬剤師綱領を図に示したもの。

簡単に言えば薬局薬剤師は調剤だけでなく、医薬品の販売、製造を通して地域に寄り添って貢献する存在であるべきということです。

「薬局の求められる機能とあるべき姿」一般社団法人日本医療薬学会
  1. 最適な薬物療法を提供する医療の担い手としての役割が期待 
  2. 医療の質の確保・向上や医療安全の確保の観点から、医療機関等と連携してチーム医療を積極的に取り組むことが求められる 
  3. 在宅医療において、地域における医薬品等の供給体制や適切な服薬支援を行う体制の確保・充実に取り組むべき 
  4. 医薬品や医療・衛生材料等の提供拠点としての役割に留まらず、後発医薬品の使用促進や残薬解消といった医療の効率化について、より積極的な関与も求められる 
  5. セルフメディケーションの推進のために、地域に密着した健康情報の拠点として積極的な役割を発揮すべき 
  6. 患者の治療歴のみならず、生活習慣も踏まえた全般的な薬学的管理に責任を持つべき

現在では、調剤薬局という造語が広辞苑に載り、そして日本標準産業分類でも用いられるようになっています。時代のニーズに合わせた結果なのでしょうが私は違和感を覚えます。

調剤薬局という造語が、「調剤(しかやらない)薬局」や「調剤(しかできない)薬局」を意味するのであればセルフメディケーション等の地域貢献を放棄していることになります。もちろん、「調剤(を主とした)薬局」や「(主ではないが)調剤(もする)薬局」であるのなら問題はないです。
つまり街の薬局は三大業務を実施する保険薬局と呼ぶべきではないでしょうか。セルフメディケーションに対応するためには、薬剤師綱領の三大業務のひとつの「医薬品の製造」に該当する薬局製剤を駆使する必要があります。

しかし、原則論から外れた専門性の高い薬局も時代から求めるのであれば否定的な見方を改めなければならないのかもしれません。
専門性の高い薬局として、癌専門調剤薬局、精神神経科専門薬局、小児専門薬局等などが考えられますが患者本人が複数受診した場合やご家族の処方箋の扱いはどうなるのでしょうか。また、漢方専門薬局では自分の薬局の患者(客)が持参した地域の医療機関が発行した処方箋には対応しないのでしょうか。そんなことでは薬剤師の職務を遂行しているとは言えないのではないでしょうか。
また、在宅訪問専門調剤薬局はこれから増加の傾向があるのかもしれません。敷地内薬局にも言えますが単なるくすりを取り揃えるという「狭義の調剤」のみであったり、デリバリー屋さんだったら言語道断です。

以下に掲げる調剤の概念を忘れないようにしなければいけません。

「調剤の概念」日本薬剤師会・編:第十四改訂 調剤指針増補班・薬事日報社、2022

薬剤師が専門性を活かして、診断に基づいて指示された薬物療法を患者に対して個別最適化を行い実施すること。

私は薬剤師の卵やひよこ達に「薬剤師は切れ目ない質の高い、安心・安全な個別最適化された薬物療法を提供する」ことだと日々伝えています。
患者さんや地域の方々の健康に貢献するためには、QOL向上を目指し、食事・排泄・運動・睡眠・認知等に対する適切なアドバイスが必須だと考えています。

みなさんはきっと多忙な業務をこなしていらっしゃると思いますが、薬剤師薬剤師法と薬剤師綱領の薬局の三大業務を思い返すのもきっと良いことなのかもしれません。

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