平野道夫
【プロフィール】
埼玉県富士見・三芳薬剤師会 学術部理事
城西大学薬学部セルフメディケーション学 非常勤講師
日経DIコラムニスト
認定実務実習指導薬剤師
近隣の薬学部学術サークル・有志の指導ボランティア担当
武道がライフワークで、中学からの空手修行で多くの大会出場
2005年 世界空手道連盟 関東大会無差別級優勝
2013年 世界空手道連盟 全日本選手権重量級3位
【著書】
「解消ポリファーマシー」(共著)
ご存じのように、ニューキノロン系抗菌薬(NQ)とNSAIDsの併用は痙攣の副作用が心配となります。添付文書を見てみると、現在では併用禁忌の組み合わせは「シプロフロキサンとケトプロフェン」、「ノルフロキサシン、プルリフロキサシン、ロメフロキサシンとフルルビプロフェン」の4つです。
一方、併用注意の組み合わせは多数ありますが、フェニル酢酸系とプロピオン酸系の2種のNSAIDsのみがNQとの併用で問題とされています。
フェニル酢酸系:ジクロフェナクナトリウム、ナブメトン
プロピオン酸系:ロキソプロフェンナトリウム、ザルトプロフェン、プラノプロフェン、チアプロフェン、ナプロキセン、イブプロフェン
NQは中枢においてGABAを介する神経抑制作用が阻害されることによって中枢神経細胞の興奮を招き痙攣を誘発する可能性があります。また。NSAIDsは単独ではGABAに作用はしませんが、NQと併用するとそのGABA阻害を増強してしまうために痙攣を誘発してしまうことが問題となります。
下記の表は私の古いノートに残っていたものです。NQ単独と、NQにNSAIDsを併用時の痙攣が起きる薬物濃度(ED50)が記されています。
痙攣の副作用で発売禁止になったフルマーク(エノキサシン)も載っていますね。ソース元を失念してしまったので軽く眺める程度でお願いします。
NSAID併用によって明らかにED50が減少するものは併用禁忌になっています。
NQとNSAIDs併用によってED50が逆に上昇しているものもありますし、NQ単独でありながら他の併用によるED50よりはるかに低い場合もあります。
シプロフロキサンとフルルビプロフェンは併用禁忌になっていませんが、調剤したくない組合せですね。
表題のレボフロキサシンは痙攣誘発作用が弱い(0.01%未満)ことが知られていて、さらにロキソプロフェンナトリウムと併用されても問題はないという報告が多いです。上記の表からもそれが予想できますし、インタビューフォームからもそのことが伺えます。
クラビットインタビューフォームには「本剤と併用注意となっているフェニル酢酸系・プロピオン酸系消炎鎮痛薬(NSAIDs)は13.7%で併用されていたが、併用による中枢神経系副作用発現率の上昇は認められなかった。」 とあります。また、ホームページには「NSAIDs非併用例(0.21%)、フェニル酢酸系・プロピオン酸系消炎鎮痛薬(NSAIDs併用例(0.22%)、その他のNSAIDs併用例(0.25%)・・・よって、NSAIDs併用によって痙攣リスクは増加していない。」との記載があります。
しかし、添付文書に併用注意との記載がある以上無視はできません。てんかん既往歴があると痙攣は起きやすく、腎機能低下者には当然注意が必要となりますので薬剤師として薬学が響く疑義照会等の対応は必要です。
したがって、十把一絡げに「添付文書上、併用注意となっていますがどういたしましょうか?」などと処方医に疑義照会することだけは決してしないようにしたいですね。