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《第4回》漢方薬の多様な使用例【まい薬局 平野道夫】

著者

平野道夫

【プロフィール】
まい薬局富士見店勤務
富士見・三芳薬剤師会学術部理事

城西大学薬学部セルフメディケーション学 非常勤講師
日経DIコラムニスト
認定実務実習指導薬剤師

近隣の薬学部学術サークル・有志の指導ボランティア担当

武道がライフワークで、中学からの空手修行で多くの大会出場
 2005年 世界空手道連盟 関東大会無差別級優勝
 2013年 世界空手道連盟 全日本選手権重量級3位

【著書】
「解消ポリファーマシー」(共著)

まい薬局富士見店ホームページ

まい薬局富士見店Twitter

漢方薬は様々な使い方がされており、医薬品添付文書には載っていない、いわゆる適応外処方も含め、私が経験した事例を基に、保険調剤における処方監査時に医師の処方意図を知る上で役立つかもしれませんのでご紹介します。

また、薬局での処方箋なしの相談対応時に薬剤師は漢方薬に関しては、OTCのエキス製品の販売だけでなく、薬局製剤という本物の漢方薬を作って提供するという差別化の手段がある訳ですから、そのときにも大いに役立つと思います。

麻杏甘石湯(小児喘息、気管支喘息)

痔核治療によく処方されることがあります。内服だけでなく坐薬にして外用薬と内用薬の両方の効果を期待する例があります。

桂枝茯苓丸加薏苡仁(ニキビ、しみ、手足の荒れ、月経不順、血の道症)

子宮筋腫の方への処方例で、喜んでいただいた経験がたくさんあります。

桂枝茯苓丸(子宮内膜炎、月経不順、月経困難、更年期障害他)

上気道炎時の喉の痛み、扁桃腺の腫れには水分を飛ばした蜂蜜で生薬を錬りあげた本物の桂枝茯苓丸を少しずつよく噛んで服用します。外用剤としてのはたらきもあるわけです。これも好評で私自身も使用しています。

柴胡桂枝湯(感冒、胃潰瘍、肝機能障害他)

陰陽五行説の「木克土」つまり木(神経)の昂ぶりによる土(胃)のダメージに奏効します。Hブロッカーに代える処方例も少なくないです。

五苓散(浮腫、二日酔い、頭痛、暑気あたり他)

二日酔いにはもちろん暑気あたり、いわゆる夏バテの際にもお薦めすることが多い処方です。数多くの漢方薬の中で「その効、神の如し」と賞賛される漢方薬の逸品です。

医療用医薬品やOTCのエキス製剤ではシナモンの味も香りもしませんが、高品質の桂枝を末にして薬局製剤として本物の五苓散を作ると最高のシナモンの味と香りがして効果も実感し易くなります。

私の薬局に五苓散を求めてくるリピーターさんの中には病院薬剤師さんや他の薬局のスタッフさんもいらっしゃいます。噂を聞きつけて試してみたらすっかり虜となってしまったようです。

半夏瀉心湯(急・慢性胃腸カタル、神経性胃炎、神経症、口内炎)

ひどい口内炎には半夏瀉心湯でよくうがいをして、そのまま服用するという方法があります。

フリーラジカルを消去する抗酸化作用があるわけですが、最近では抗癌剤のイリノテカン(核酸合成阻害薬)の副作用の口内炎にも使われますし、同じくイリノテカンの副作用の遅延性の下痢にも使われます。

甘草乾姜散(医療用医薬品はなし)

主成分の乾姜は生姜と違い肺や大腸などの深いところを芯から温めてくれます。とにかく身体が冷える方や、肺の冷えを伴う花粉症にもお薦めしています。

ちなみに花粉症にも応用される小青竜湯の構成生薬でもあります。

その他

体力がまだ残っている場合にはNK細胞を活性化する補中益気湯、体力が残っていなくて発熱症状がない場合にはマクロファージを活性化する十全大補湯を用いるというようなコツもあります。

ご紹介したものはいわゆる口訣です。鵜呑みにせず体質の見極めや相互作用リスク等をしっかりと勉強されてから自己責任でご活用ください。

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