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《第5回》代謝から考えるH2ブロッカーとPPIの調剤【まい薬局 平野道夫】

著者

平野道夫

【プロフィール】
まい薬局富士見店勤務
富士見・三芳薬剤師会学術部理事

城西大学薬学部セルフメディケーション学 非常勤講師
日経DIコラムニスト
認定実務実習指導薬剤師

近隣の薬学部学術サークル・有志の指導ボランティア担当

武道がライフワークで、中学からの空手修行で多くの大会出場
 2005年 世界空手道連盟 関東大会無差別級優勝
 2013年 世界空手道連盟 全日本選手権重量級3位

【著書】
「解消ポリファーマシー」(共著)

まい薬局富士見店ホームページ

まい薬局富士見店Twitter

H2ブロッカーは腎排泄型薬剤が多いので腎機能低下者に注意が必要で、PPIは肝臓で代謝されるので肝機能低下者に注意が必要となります。

したがって、腎機能低下者においてはH2ブロッカーからPPIへ、肝機能低下者にはPPIからH2ブロッカーに変更になるケースもあるわけです。

日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」において、H2ブロッカーは、認知機能低下、せん妄を引き起こすリスクがあるため、可能な限り使用を控えることが望ましいとあるので患者が高齢者のケースでは、腎機能から計算して例え適正量であっても処方は控えるべきなので過量投与などとんでもないことになります。

そこで腎機能低下者には腎排泄型のH2ブロッカーではなく肝代謝型のPPIを処方するという考え方も一般的ですが、PPIとAKI(急性腎臓病)およびCKD(慢性腎臓病)との関連性を示唆する観察研究の論文が多く報告され、メタ解析によってPPIとCKDとの有意な関連性が示されたことから、2017年11月8日付で米国消化器病学会から注意喚起がなされました。日本腎臓学会は「PPI処方中はその必要性を定期的に見直し、患者へ与えるリスクとベネフィットを勘案して、漫然とした長期投与を避ける注意が必要と考える。」としていますのでPPIにすれば大丈夫だと安易に考えてはいけないことになります。

また、H2ブロッカーの中で例外としてラフチジンは主として肝臓で代謝されると考えられていますので腎機能低下者に他のH2ブロッカーから変更される例もよく聞きます。

その根拠として、ラフチジンの先発品のプロテカジンの添付文書に載っている以下の表があります。

しかし添付文書には「透析患者では非透析時の血漿中未変化体濃度は健康成人と比べてCmaxが約2倍に上昇し、T1/2が約2倍に延長し、AUCが約3倍に増加した。」との記載もあります。そこでラフチジンに変更せずに、腎排泄型のH2ブロッカーを敢えて選択することもあります。腎機能に応じた処方量をエビデンスに基づいて調整することはとても安心な調剤となります。

一方、肝細胞癌で入院中の患者 (AST/ALT : 88/86)が舌のざらつき感と味覚異常を訴え、処方されていた肝代謝型薬剤のランソプラゾールから腎排泄型薬剤のファモチジンへの変更を薬剤師が提案し、医師が変更したところ症状が消失したという報告もありました。(2009年の日病薬誌 第45巻1号)

また、H2ブロッカーのシメチジンは腎排泄型で、石灰沈着性腱板炎の改善、慢性蕁麻疹、ウイルス性疣贅、慢性前立腺炎、膀胱炎、癌転移抑制、PFAPA症候群などの適応外処方も知られていますが、腎排泄型薬剤でありながらP450に関与し、CYP1A2、CYP2D6、CYP3A4などの薬物代謝酵素に対して阻害活性を示すことから薬物間相互作用にも注意が必須となります。

以上のように、H2ブロッカーとPPIの調剤は代謝にフォーカスを当てた処方監査も重要となります。すべての薬に言えることですが、効果を確認しながら検査データの変化や副作用の防止に努めていきたいと思います。

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