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薬局DXって?第2回~デジタルトランスフォーメーションとは~【(株)ツールポックス代表取締役 富澤 崇】

著者

富澤 崇

【プロフィール】
株式会社ツールポックス代表取締役
北里大学客員准教授

1998年東京薬科大学卒、千葉大学博士課程修了(薬学博士)、 山梨大学医学部附属病院、クリニック、複数の薬局で勤務。
2001年から城西国際大学薬学部の教員として約20年勤務。大手チェーン薬局にて人事・教育・採用部門に従事。
2017年株式会社ツールポックスを設立。経営コンサルティング、キャリア支援、従業員研修などのサービスを展開。

【活動】
ファーマテック企業とのコラボレーション、大学での調査研究、セミナーの講師など、薬剤師業界のデジタル化に多方面から関与。Pharmacy DX Newsの編集部員としても活動中。

Pharmacy DX News

薬局DXをテーマに3回にわたって解説します。

DXって何って?「デジタルトランスフォーメーション」です。言葉は聞いたことあるけど、実はよくわかってない!という方のために、基本的なところを中心に解説していきます。

2回目は、「デジタルトランスフォーメーションとは」ということで、一般的な概念を押さえつつ、薬局でどうDXが実現されるのかについてお話します。

1.デジタルトランスフォーメーションとは

DXとは、データの利活用と変革

デジタル技術を表す「Digital」と変革を意味する「Transformation」が合わさった言葉です。

経済産業省の「DX推進ガイドライン」(2018年12月)には、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会ニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と表されています。

ここで重要なポイントが2つあります。

  1. デジタル技術だけではなく、データを活用すること。
  2. そして変革を起こすこと。

この2つがこれまでのIT化・デジタル化との大きな違いです。

ペーパレスにするとか、会議をリモートでやるとか、業務を自動化するというレベルの話ではなく、蓄積されたデータを活用して、新しい知見や応用を生み出し、かつそれによってユーザー体験に変革を起こすことがDXなのです。

デジタイゼーション、デジタライゼーション、そしてデジタルトランスフォーメーション

DXを理解するためにもAnalog時代からDX時代への変遷を見てみましょう。

まず、業務効率化やコスト削減などを目的にアナログな作業をデジタル化する「Digitization」が起こりました。ツールのデジタル化です。薬局でいえば、紙の薬歴が電子化されたということです。

次に、サービス・製品のアップデートを図り新たな価値を提供する「Digitalization」へと進みました。プロセスのデジタル化です。レセコンとピッキング監査システムや一包化の機器が連動し、業務効率化が図られるといったのが一例です。

そして今は、デジタルを活用して新たな価値を生み出し、ビジネスモデルそのものを変革する「Digital Transformation」と進んでいます。

3つを明確に区切ることが目的ではないので、それぞれの違いをざっくりイメージできれば結構です。

では、次にDXの具体的なイメージについてお話したいと思います。

2.薬局でのDX

身近なDX

薬局でのDXの具体例に話を進める前に、身の回りのDXについて見てみたいと思います。

経済産業省が毎年、デジタル技術を前提として、ビジネスモデル等を抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていくDXに取り組む企業を、DX銘柄として選定しています。選定された企業の取り組み事例はこちらから見ることができます。

他にも身近な例でいうと、タクシー配車アプリの「GO」、コンビニやスーパーでの無人決済システム、Netflixのようなサブスクリプションの映像配信、ネットショッピングでのリコメンデーションなど、普段何気なく利用しているサービスにもDXが活用されています。

前回ご紹介した治療用アプリやIoTによる健康管理などもDXの一例です。高血圧治療のサブスクリプションも登場しました。医療や健康分野でもDXは着実に起こっています。

電子薬歴で人事評価!?

では、薬局のDXとは?という話に移りたいと思います。とはいえ、薬局におけるDXはまだ始まったばかりで、実例をご紹介するというよりは、近未来を予測する話になります。

たとえば、こんなことが起きるのではないでしょうか?

  1. レセコンや電子薬歴のデータから、薬剤師のパフォーマンスや経営課題を可視化する。
  2. 薬歴の内容と患者の治療効果や健康行動の相関を見る。
  3. 指導内容に応じて、LINE連携の服薬フォローアップシステムでお勧めのサプリメントが自動でリコメンドされる。
  4. 服薬アドヒアランスのデータを集約して、製薬メーカーにフィードバックする。

薬歴の文字数、使用される単語、入力に要した時間、技術料の算定などから、薬剤師個人のパフォーマンスを評価し、人事考課に生かすなんてことも想像に難くありません。薬剤師AさんとBさんで新患のリピート率が異なるなら、AさんとBさんの患者対応の違いを分析することでコンピテンシーやベストプラクティスを可視化し、人材育成に活用することができます。

レセコンや電子薬歴などに蓄積されたデータを活用して、新たな知見を生み出すというわけです。

電子薬歴に入力された内容からAIが自動的にLINE連携の服薬フォローアップシステムを介して、患者にメッセージを送ったり、チャットボットで最低限の応答をしたり、サプリメントやエクササイズを提案したり、といった顧客体験の変革もDXです。

人間が想像できることは、人間が必ず実現できる

19世紀のSF作家ジュール・ヴェルヌが語ったとされる言葉です。

AIによる医薬品在庫の最適化、リモートワークをする薬剤師従業員との情報共有、オンライン服薬指導時の顔認証や声の識別による感情や体調の読み取り、ウェアラブルデバイスによるヒューマンエラーの防止など、イマジネーションを膨らませるとワクワクしてきませんか?

薬局はもとより医療・健康分野でのテクノロジーの進歩は目覚ましいものがあります。今までの10年よりもこれからの10年の方が、加速度がつきますから飛躍的な進歩が期待できます。

一方で、課題もあります。それについては次回の3回目でお話したいと思います。

【おまけ】
経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」
企業が既存システムを刷新できなければ、AIなどのデジタル技術を用いてビジネスモデルの創出や改変を行うデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現できず、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性がある。

今回は、DXとは何か?薬局でどうDXさせるのか?についてお話しました。近未来の話が出てきたので少し目線が上がったのではないでしょうか。今、デジタル化を躊躇していると時代に取り残されてしまいますよ!

次回は、薬局DXによってどんな変化が起きるのか、それにどう対応すればいいのか、今後の課題などについてお話します。

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